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こんな“こじらせSalesforce”は要注意——「失敗事例あるある」と「解決策」を“元、中の人”と実装経験者が本音トーク

2021.07.08 admin CRM DX Salesforce 会員限定記事

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 うまく使えば業績アップのための強力な武器になるが、実装や運用の方法を誤るとせっかくの機能が宝の持ち腐れになってしまう——。CRM(Customer Relationship Management)・SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)ツールのデファクトスタンダードとして知られるSalesforceは、そんな風に言われることもしばしばだ。


 AnityA(アニティア)が2021年5月に開催したイベントの前半では、元セールスフォース・ドットコムの営業部長として数多くのSalesforce導入・運用プロジェクトを間近で見てきた株式会社digsasのFounder&CEO 石井友規氏が「可燃性の高いCRMを安全に取り扱うために知っておきたいこと」と題したプレゼンテーションを行い、導入失敗の具体的なパターンや、導入を成功させるために欠かせないポイントについて解説した。


 イベントの後半ではこのプレゼンテーションの内容を受けて、HR Techベンチャー企業においてSalesforceの導入・運用を長年リードしてきた祖川慎治氏と、AnityA 代表取締役 中野仁氏、それに石井氏を加えた3人によるパネルディスカッションと、イベント参加者からの質問に答えるQAセッションが行われた。本記事では、その内容をダイジェストで紹介する。


 なお、石井氏のプレゼンテーションの内容は、別途「『ぼくがかんがえたさいきょうのCRM』は、だいたい失敗する——元“Salesforceの中の人”が伝授する「導入の失敗を避ける8つのポイント」と題した記事で紹介しているので、そちらを一読いただきたい。


●ベンダー側担当者の行動原理を理解した上で交渉に臨む


中野氏: 私はこれまでSalesforceの導入や再立ち上げのプロジェクトを何度か経験してきましたが、石井さんのプレゼンテーションを聞いてあらためて、CRMの概念を正確に理解することの大切さが分かった気がします。


 「CRMはインプットとアウトプットが不明確」「業務にシステムを合わせがち」という話も、CRMプロジェクトが炎上しやすい理由としてとても腑に落ちましたね。ちなみに祖川さんも、これまで数々のSalesforce立て直しプロジェクトを担当してきたんですよね?


HR Techベンチャー企業で長年、Salesforceの導入・運用をリードしてきた祖川慎治氏

祖川氏: そうですね。導入後2、3年経ってもなかなか活用や定着が進まない状態のSalesforceを引き継いで、あらためて有効活用できるようにするためのさまざまな取り組みを進めてきました。


 引き継いだ当初は、ようやく顧客情報のデータベースが出来上がって、商談の情報もこれから蓄積していこうかという段階でした。そこからさまざまな部署の業務をヒアリングしながら、より実務で役立つ使い方を模索しながら少しずつ定着化を図っていきました。


中野氏: 先ほどの石井さんのプレゼンテーションでは、炎上しやすいCRMプロジェクトの典型例が幾つか挙げられていましたが、やはりセールスフォース・ドットコム社の営業の立場から見ても、「これは炎上するな」というプロジェクトは分かるものなのでしょうか。


石井氏: セールスフォース・ドットコムの営業は、短期間のうちに最大の売上を上げるよう会社から命じられているので、どうしても成約した後の導入プロジェクトのフォローまで手が回らないんですね。かといってインプリを直接支援するチームやサービスが充実しているわけでもないので、自ずとパートナー企業に任せきりになりがちです。


 一方、パートナー企業の担当者は技術寄りの方が多いので、セールスフォース・ドットコムの営業がお客様に提案したビジネスプランをなかなか理解しきれず、どうしても理想と現実の間のギャップが生まれて炎上しやすくなります。


中野氏: セールスフォース・ドットコムに限らず、外資系ベンダーの営業は大体同じような動き方をしますよね。短期間のうちに最大規模の契約を勝ち取って、なるべく早期にインセンティブボーナスを得ようとする。逆にいうとユーザー側としては、ベンダー側のそうしたインセンティブ体系や行動原理を理解しておいた方が交渉を有利に運ぶことができますね。


●ベンダーやSIerに頼りきりになるのではなく自社で主体性を持って取り組む


石井氏: ちなみにイベント参加者の方からは、「セールスフォース・ドットコムにはカスタマーサクセスの部隊がありませんでしたっけ? 営業よりはそちらに期待したいです」というコメントをいただいています。


祖川氏: 実は一度、弊社のカスタマーサクセスチームのベンチマークのために、セールスフォース・ドットコムのカスタマーサクセスチームの業務をヒアリングさせていただいたことがありました。そのときにうかがった話では、少数の大規模クライアントを担当する「ハイタッチ」のチームと、その他のクライアントをまとめて担当する「ロータッチ」のチームがあるとのことでした。


石井氏: ちなみにハイタッチチームのメンバーは精鋭ぞろいで、外部からコンサルタントを雇うのと同等レベルの高品質な支援を提供しています。でもハイタッチの対象となるクライアント企業は、それこそ年間何億円ものライセンス料を支払っているほんの一握りの大規模ユーザーに限られます。大多数のユーザー企業はこの恩恵にあずかることはできないので、カスタマーサクセスに過度な期待はしない方がいいですね。


 むしろ外に頼るのではなく、「自分たちでやるんだ!」という主体性を持たないとSalesforceをうまく使いこなせるようにはならないと思います。


祖川氏: 初期構築時こそSIerの支援を仰ぐのはいいと思いますが、Salesforceは導入後の運用フェーズでの改善が最も重要ですから、運用までSIerに丸投げしてしまうと改善スピードがなかなか上がらず、結局現場になかなか定着しません。


石井氏: SIerはSalesforceのライセンスを卸すだけではほとんど儲かりませんから、導入時の開発工数をなるべく膨らませようとする傾向にあります。その結果、本来はSalesforceの標準機能だけでできるはずの機能も独自開発を提案し、その結果、とてつもないコストが掛かってしまいます。もちろん、実際の構築作業をSIerに任せるのは全然アリですが、上流工程まで丸投げするべきではありません。


祖川氏: 同感ですね。ちなみに私が手掛けるプロジェクトでは、パートナー企業のエンジニアに手助けしてもらうこともありますが、基本的には設計と運用を内製しています。


●大抵のユーザー要件は「Salesforceの標準機能だけ」で実現できる


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