※本記事は、白川克氏と濵本佳史氏の著書「システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ」(日本経済新聞出版刊)の一部を編集し、転載しています。
私がシステム構築に関わるようになって四半世紀が経つが、この間ずっと、システム構築をアウトソースする割合は高くなっていった。
システムインテグレーター(SIer)と呼ばれる業者にシステム構築を丸投げするようになった企業が増えた。今まで自社で手作りしていたシステムを、パッケージソフトに置き換えるのも、一種のアウトソースと言える。よりドラスティックなケースでは、IT部門をまるごとアウトソースする企業も現れた。
だが2018年ごろから、風向きが変わったようだ。ITを使った変革に積極的な企業ほど、システム構築や運用を人任せにせず、内製するようになってきたのだ。そういう企業の典型的なアクションは以下の通りだ。
・数社を渡り歩いた経験豊富なCIO(IT担当役員)をヘッドハンティング
・CIOのツテで腕のよいエンジニアを多数採用する
・ITをテコにした大胆な変革プロジェクトを推進する
経営トップ(CEO)としては、ITを活用して会社自体を変革する必要を痛感しているのだが、既存システムの保守だけをしてきたこれまでのIT部門には、リーダーシップを期待できない。だから外からの風を入れて無理やりにでも変えるしかない、という判断だろう。
そして腕のよいエンジニアさえ集めれば、「ITの力でビジネスモデルを大胆に変えるような変革(DXと呼ばれている)」は、外から雇ったベンダーに丸投げするよりは、社内の人間が主体になった方が成功させやすい。
ビジネスとITをいっぺんに変えるには、「作る人」と「作らせる人」が同一人物だったり、同じプロジェクトで机を並べる、同志の関係にあったほうがいいに決まっている。
もし内製化を志向する企業にあなたが勤めているならば、この章を読むときには「ベンダー選定」部分を無視して「パッケージ選定」部分のみを参考にして欲しい。いくら内製化といっても、SaaSを始めとしたパッケージを使わないシステム構築は現在ではありえないので、パッケージ選定については十分参考になるだろう。
逆にもし、現時点で外部のITベンダーへの丸投げが常態化している企業に勤めているならば、まずは「作らせる技術」をしっかり習得してほしい。「作らせる人」がこの本に書かれたことを愚直にやると、外部ベンダーと協力してプロジェクトを遂行する際にも魂を込めることができるだろうから。