※本記事は、白川克氏と濵本佳史氏の著書「システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ」(日本経済新聞出版刊)の一部を編集し、転載しています。
システムを作る際には「選定に役に立つ情報をいかにベンダーから引き出すか?」が重要だが、実はさらに重要なことがある。
パッケージやベンダーについて「本当のこと」を知りたいならば、実際にそのパッケージを使っているユーザー、そのベンダーと一緒に仕事をしている人々に聞くのが一番いい。
パッケージやベンダーの営業さんは買ってもらうのが仕事なので、質問しても基本的には良いことしか言わない。たまに「OPENに話してますよ」というスタンスを見せるために、弱点を10%くらい混ぜて話す営業もいるが、どちらにせよ、彼らは売るために話している。強いバイアスがかかっていると思うべきだ。
だからユーザーに聞くのが一番正確で、生々しい。
知人のつてを使ってユーザーを探してもいいし、公表されているユーザー情報をもとに、その会社の代表電話に連絡してもよい(つないでくれないこともあるが……)。私たちのようなコンサルタントに紹介してもらうのも手だ。
こういった時に気軽に情報交換できるように、システムユーザー会に常日頃から所属するのが一番よい(オフィシャルなものから、緩やかなネットコミュニティみたいなものまであります)。
どうしてもユーザーが見つからなければ、選定対象のベンダー自身に紹介してもらう方法もある。他社のユーザー候補に快く会ってくれるユーザーがいるのは、顧客満足度が高い証。だから紹介してくれるだけでも、そのベンダーに対して心証は良くなる。
とにかく手段は選ばず、すでに使っている人と話をするべきだ。そしてベンダーからは聞き出しにくい、弱点を徹底的に教えてもらう。
「検索機能は弱いので、別のSaaSと組み合わせて使っています」
「導入コンサルタントのスキルの差が激しい。ウチも交代してもらいました」
「もうバージョンアップは諦めています……。サポートが切れたら他のパッケージに乗り換えます」
などと、意外と率直に話してくれる。会社は違えども、システム構築という難しい仕事をやっている人の間では、同志感覚みたいなものがあるのだろう。
もちろん弱点のないパッケージやベンダーは存在しない。弱点を聞き出すと少しがっかりするが、選定時点で弱点を把握し、それでも腹をくくって選んだほうが、後悔しなくてすむ。
これは厳しいシステム構築プロジェクトをやりきるためには案外大切なことだ。