原則7:対象領域を絞ったスモールスタートで始める


※本記事は、小川康二氏・伊藤洋一氏の著書「DXを成功に導くデータマネジメント データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75」(翔泳社刊)の一部を編集し、転載しています。

スモールスタートで戦略的に広げる

 データマネジメントを始めると、意外とやることが多いことに気付くと思います。そうなってしまう理由は、データマネジメントの経験がない中で、DMBOK2をベースに一通りやろうと考えているからです。ただし、仕方ない部分もあります。現場としては、どのデータマネジメント施策を最優先に行えば良いか、なかなか判断が難しいのが本音のようです。

 幅広く始めるとビジネスサイドから「何のために行うのか」と問われ、一向に進まなくなることもあります。また多くの部門を相手にすることになり、人的リソースが足りず、辛い思いをしながら進めることになるかもしれません。反発を受けて、企業全体でデータマネジメントに対するアレルギーを招く恐れもあります。

 そこで、まずは短期的に効果を得られやすいマーケティング関連に絞って、顧客データの統合、商品データの統合、法規制への対応から着手し、企業全体に成功体験をつくることから始めるのが良いでしょう。成功体験が得られることで、ビジネスサイドに必要性が理解され、横展開がやりやすくなります。

スモールスタートの本当のねらい

 スモールスタートのねらいは、仕組みをつくることです。施策は何でも良いので、まずは一通りガバナンス・マネジメントのプロセスを回し、回していく中で足りない施策を拡充させるという考え方にもっていくのがベストです。最低限の体制・プロセス・ルール・基盤をつくって回してみましょう!

コラム:ガバナンスとは

 ガバナンスの歴史的起源は、ラテン語のgubernareで「船を操舵する」という先導の意味があるようです。文献では「統治」という言葉を使っているので、「統制」は使わないほうが良いかもしれません。

 ガバメントとガバナンスはもともと同義だったようですが、ガバメントは国の統治、ガバナンスはそれ以外で使うようになったそうです。

 第1章で立法・行政・司法の活動がガバナンスだと触れましたが、国の統治で置き換えれば、この見方もあるということですね。

 ガバナンスについて詳しく知りたい方は、以下の文献をお薦めします。

・なぜ「ガバナンス」が問題なのか?政治思想史の観点から, 宇野重規, 東京大学社会科学研究所
・ガバナンスを問い直す[I], 大沢真理/佐藤岩夫, 東京大学社会科学研究所
・ガバナンスとは何かマーク・べビア, NTT出版

関連記事