
※本記事は、小川康二氏・伊藤洋一氏の著書「DXを成功に導くデータマネジメント データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75」(翔泳社刊)の一部を編集し、転載しています。
ガバナンスとマネジメントは違う?
データガバナンスは、データマネジメントの実行を監督・サポートするものであり、データマネジメントそのものではありません。
統治するためのフレームワークを定めることがデータガバナンスの役割で、現場で日々発生するデータを管理するのがデータマネジメントの役割です。
後述のコラムにガバナンスの語源と参考文献を紹介していますが、統治は人に対して使う言葉、マネジメントは財産に対して使う言葉です。それぞれ見ている対象が異なる点に着目すると見通しが良くなると思います。
データガバナンスは委員会方式
データは組織横断で利用して初めて価値を創出するため、データガバナンスを推進するには、特定の組織や部門が担当するよりも、各事業部門や業務部門の責任者を集めて、チーフデータオフィサー(CDO)が調整役やファシリテーション役としてリードする委員会方式をとります。
委員会には他にも青写真が描けるチーフデータアーキテクト(CDA)や情報システム部門の最高責任者でもあるチーフインフォメーションオフィサー(CIO)にも参画してもらい、将来構造の実現可能性を描いていきます。
EDMとPDCA
データガバナンス活動とは、EDMを循環させることです。
EDMとは、E:Evaluate(評価)、D:Direction(方向付け)、M:Monitor(モニタリング)を表します。
Evaluateは、データマネジメント施策に基づく投資対効果を評価し、効果があれば追加投資を行い、効果がなければ施策を変える、やめるといった判断をする機能です。Directionは、データマネジメント施策に基づいて、データマネジメント推進リーダーの方向付けを行う機能です。Monitorは、データマネジメント施策が達成されているかモニタリングする機能です。
データマネジメント活動とは、PDCAを循環させることです。
PDCAとは、P:Plan(計画)、D:Do(実行)、C:Check(チェック)、A:Act(改善)を表します。
Planは、データガバナンスからの方向付けに基づいて、データマネジメント施策の実行計画を立てて、体制・役割を具体化する機能です。Doは、データマネジメント施策に基づいて、データ活用基盤の構築・維持が行われるように技術支援・レビュ・教育を提供する機能です。Checkは、データ活用者がデータ活用基盤をより良く利用できるように、データマネジメント施策の範囲内でサポート(例えばデータ辞書の提供)する機能です。Actは、データマネジメント施策に基づいて、データ活用基盤が問題なく構築・維持・運用されているか評価・改善し、ガバナンスへ報告する機能です。
EDMは経営視点で循環させ、PDCAは現場を育てる視点で循環させます。それぞれ目的をもって独立して循環させることで、組織全体が循環し、文化が醸成され、データ駆動型経営の実現に近づいていきます。
