原則1:データを資産として扱う


※本記事は、小川康二氏・伊藤洋一氏の著書「DXを成功に導くデータマネジメント データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75」(翔泳社刊)の一部を編集し、転載しています。

資産とは何か?

 資産とは、会計上の説明では貨幣に換算できるもので、将来に亘って企業に収益をもたらすことが期待される価値のことをいいますが、本書では、価値を生み出す潜在的な能力をもっている経営資源と定義します。

 ここでいう価値とは、経営資源を活用することで得られる利益です。ある経営資源を活用した施策の結果「キャッシュフローを生み出す」、「コストを抑える」、「売上を伸ばす」、「新商品を生み出す」、「顧客のニーズに応える」といったことを実現でき、それを通じて直接的・間接的に利益が生まれるのであれば、その経営資源には価値があるといえます。

データは第4の資産

 経営において、ヒト・モノ・カネは資産として当たり前のように考えられています。加えてDX時代においては、データも資産として認識すべきです。データが生み出せる価値とは、意思決定や戦略を補佐し、新しいインサイトを得られるところにあります。

 しかし、データに限らずですが、資産をもっているだけでは価値は生まれません。このことを、改めて認識するべきです。例えば、ヒトという経営資源は、「仕事」をすることで組織に価値を提供し、カネは「投資」されて初めて価値貢献します。それと同じように、データはヒトが「分析」して初めて意味のあるインサイト(洞察、潜在ニーズなど)を得ることができるのです。

資産として維持するにはガバナンスとマネジメントが必要

 資産の価値を保ち、向上させるためには、ガバナンスを利かせて、マネジメントを行う必要があります(図2.4.1)。

 データにおいては、データを生み出した責任者でもある「所有者=データオーナー」を明らかにして、データの価値を保ち、向上させるように責任をもってマネジメントしてもらう必要があります。

 いくら口で「データを資産として扱っている」と言っても、データの所有者がはっきりしておらず、マネジメントされていなければ、そのデータは価値が保証されていない値の羅列に過ぎないのです。

 つまり、単なる資源かもしれないし、資産かもしれないということです。もしかしたらダークデータに代表されるような負債ということもありえます。

 データを資産として扱うためには、遠回りに見えるかもしれませんが、データガバナンスを利かせて、データマネジメントに取り組むしかありません。

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