
※本記事は、小川康二氏・伊藤洋一氏の著書「DXを成功に導くデータマネジメント データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75」(翔泳社刊)の一部を編集し、転載しています。
バリューチェーンモデルで見たデータマネジメントの範囲
図2.3.1はマイケルポーターが提唱したバリューチェーンモデルをもとに、データマネジメントの位置付けを筆者らが示したモデルです。

データはバリューチェーンからすると経営資源であり、データを活用して初めてそのデータには価値があると考えます。
Point!食材の提供がデータマネジメント
飲食店で例えるなら、より良い食材を提供するのはデータマネジメントサイドの仕事で、最高のレシピを考えて料理を提供するのはビジネスサイドの仕事といえます。
サービスブループリントで詳細化する
バリューチェーンモデルは、業務機能を連鎖させて価値を創出するモデルであることから、企業全体を俯瞰して関係者間の共通認識をつくるのに役立ちます。
しかし、サービスごとのプロセスを捉えるには粗すぎるため、詳細なモデルが必要です。
そこで、サービスを中心に顧客のタッチポイント(接点)や心の動きを表したものとして「サービスブループリント」というモデルがあります(図2.3.2)。サービスブループリントを使うことで、具体的に必要なデータは何かを整理することができます。

まとめると、バリューチェーンモデルで全体を押さえ、サービスブループリントで詳細を押さえます。これらのモデルを使って、ビジネスサイドとデータマネジメントの共通認識をつくり、同じベクトルを向いて、仕事をしていくようにもっていきます。
サービスブループリントは、図2.3.2のようにカスタマージャーニーで系列化させて、フロントステージとバックステージの関わりを示し、サポートプロセスがどのように支えているか見えるようにします。
データマネジメントは、サポートプロセスに登場する機能です。サービスブループリントでデータマネジメントの位置付けを見えるようにすることで、データマネジメントが材料を提供するサポート機能であることがわかると思います。
データガバナンス活動プロセスの概観
第3章〜第5章では、組織づくりについて解説します。本書ではデータガバナンスの実行について、その詳細は触れていませんが、組織づくりを成功させるためには、データガバナンスの実行が不可欠です。
ここでは簡単に、データガバナンス基本方針策定とデータガバナンス実行のプロセスを解説します。図2.3.3と合わせてご確認ください。

組織づくりのスタートは、データガバナンス側での基本方針策定です。施策策定、組織設計、ガイドライン策定が完了したら、データガバナンスの実行に移ります。
データガバナンスの実行では、データガバナンスチームがデータマネジメントチームにデータガバナンスの基本方針を伝えます。データマネジメントチームは、基本方針に基づいてPDCAを回し、データガバナンスチームに報告します。
データガバナンスチームは、データマネジメントチームからの報告とモニタリング結果を受けて、施策内容を評価します。評価結果に基づいて、基本方針策定の改訂を行います。
このように循環させることで、データマネジメントの文化が醸成されます。スモールスタートであっても、このプロセスを回すことが大切です。