今さら聞けない、デジタルトランスフォーメーションとは何か(2)


※本記事は、斎藤昌義氏の著書「図解 コレ1枚でわかる最新ITトレンド」(技術評論社刊)の一部を編集し、転載しています。

 DXが目指す「変化に俊敏に対応できる企業文化や体質」を実現するとは、次のことができるようになることです。さらには、この一連の取り組みを当たり前として行動する習慣を組織に根付かせることです。

高速に見える化:IoTやビジネス・プロセスのデジタル化によって高頻度・多接点でデータを収集する仕組みをビジネスの基盤に据えること

高速に判断:そこで得られたデータを分析・解釈して、顧客との関係やビジネスに関わる課題やテーマを見つけ出すこと

高速に行動:その課題やテーマについて、ユーザーとの接点であるUI(User Interface)やわかりやすく心地よい体験を実現するUX(User Experience)、収益の源泉であるプロダクトやサービス、ビジネスを駆動するビジネス・プロセスを高速・高頻度で改善し続けること

 そこで大切になるのが組織の「心理的安全性」です。

 「心理的安全性」とは、「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームに共有された信念」のことです。単なる仲良しクラブではなく、自分自身の確固たる主張や意見を持ち、それをお互いにぶつけ合うことができるプロフェッショナル同士の高い信頼関係が前提です。そして、お互いに相手の多様性を認め、敬意を払い、信頼を分かち合える関係のことです。

 組織に所属するすべてのメンバーがこのような「心理的安全性」に支えられ、自律的に仕事に打ち込み、多様な考えを許容できるからこそ、圧倒的なビジネス・スピードとイノベーションが生まれるのです。

 そんな組織で働く人たちは、自律的、自発的に改善して、より付加価値の高い仕事へと時間も意識もシフトする「働き方改革」が実現するでしょう。また、失敗を繰り返しながら高速で試行錯誤を繰り返すことが許容される雰囲気の中であればこそ、「新規事業」がどんどんと生み出されていきます。

 さらには、ビジネスの最前線にいる人たちが、環境の変化を敏感に感じ取り、主体的にビジネス・モデルを転換していくことにも取り組むようになるでしょう。

 DXとは、そんな「高速に変化し続けることができるビジネス基盤」を実現することであり、企業文化や体質を変革する取り組みなのです。

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